· 

【霜降】もみじは紅色なの?黄色なの?

一年を24に分けたものを二十四節気と呼び、

それをさらに3等分ずつにしたものを七十二候と呼びます。

 

ひとつの節気で大体15日間、ひとつの候で約5日間です。

 

11月2日~11月7日頃は、二十四節気で言うと「霜降」、

七十二候は「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」と名付けられています。

 

* * * * * * * *

 

すっかり冷え込んできましたね。

 

今回の七十二候の通り、

木々の葉が色づく季節がやってきました。

 

もみじと言うと、現代では楓の葉を指すことが多いですが、

紅葉した葉全般のことを言うこともできます。

 

実は、もみじは「もみつ(もみず)」という動詞が名詞化したもの。

「もみつ(もみず)」は草木が赤や黄に色を変えるという意味の動詞です。

 

 

そして、現代ではもみじを紅葉と表記しますが、

奈良時代の『万葉集』ではもみじ=黄葉という表記が多かったそうです。

 

どうして黄葉から紅葉へと変わったかというと、

 

諸説あるようですが、

 理由の一つとして、紅という色の価値が関係していると考えられています。

 

以前、ブログで紹介しましたが、

かつて紅花から作られる紅色は、金に匹敵するほど価値あるものでした。

(紅についての記事はこちら

 

貴族社会の中で、

紅は憧れの対象であり、愛好された色だったのです。

 

もみじは秋の景物として和歌に詠まれることが多いですが、

もみじの美しさを表す表現として、

黄葉よりも紅葉の方が好まれたのではないかというわけです。

 

 

百人一首の有名な歌に、

 

ちはやふる 神代も聞かず 竜田川 唐紅に 水くくるとは

 

というものがありますね。 

これは平安時代のモテ男、在原業平が詠んだ歌です。

 

簡単に訳すなら、

 

散ったもみじが竜田川をこんなに美しく彩る情景は、

神々の時代にだって聞いたことがない。

 

となりますが、

業平が、もみじを唐紅と表現していることがポイントです。

 

唐紅は鮮やかな濃い赤のこと。

 

しかし、単に色を指すのではなく、

唐紅というのは、色の美しさを称賛する語でもあるのです。

 

このように、

業平がもみじに対して唐紅という称賛語を使っていることからも、

平安人が赤い葉に美しさを感じ、愛好していたことが分かりますね。

 

現代の私達が、もみじと言うとまず赤い葉(主に楓)を思い浮かべるルーツは、

平安の人たちの美的感覚にあるのかもしれませんね。