一年を24に分けたものを二十四節気と呼び、
それをさらに3等分ずつにしたものを七十二候と呼びます。
ひとつの節気で大体15日間、ひとつの候で約5日間です。
7月28日~8月1日頃は、二十四節気で言うと「大暑」、
七十二候は「土潤溽暑(つちうるおうて むしあつし)」と名付けられています。
* * *
七十二候の通り、じっとりと蒸し暑いこの時期。
七十二候では「溽暑」を「むしあつし」と読んでいますが、
音読みすると「じょくしょ」と言います。
「じょくしょ」と読む場合も意味は変わらず、
蒸し暑いことを指す言葉です。
じめじめと暑い夏は、
昔の人にとっても過ごしづらいもの。
冷房がなかった分、
きっと今より大変だった面も多いでしょう。
例えば、江戸時代の歌舞伎小屋などは、
閉じられた空間に人が密集したわけですから、
相当な暑さだったはず。
ですので、夏場はどうしてもお客さんが減ってしまうわけです。
そこで、お客さんを呼び込むためにも、
歌舞伎では涼しさを感じさせる演出が発展しました。
本水(ほんみず)といって、
舞台上で本物の水を使う演出もその一つ。
水槽のように眺めるというのではなく、
役者が豪快に水を被ったりするんです。
今の歌舞伎でも本水の演出はもちろん残っています。
私も観たことがありますが、
舞台が水浸しになる様は、
なんとも説明しがたいすごい光景だなぁと感じました。
また、怪談物も夏の歌舞伎の特徴ですね。
夏=怪談というのはどうやら日本特有の価値観のようです。
これは夏にお盆があることが影響していて、
歌舞伎で夏に怪談物を上演するようになったのも、
先祖の霊がこの世に帰ってくるお盆が夏にあることと
関係があるようです。
ただ、お盆のある無しに関わらず、
春先や秋口の心地よい気候よりも、じめじめと暑い夏夜の方が、
肌感覚として怪談が似合う気がするんですよね。
きっとお盆だけでなく、
蒸し暑い気候など色々な要因が重なって、
夏=怪談のイメージが出来上がっていったのだろうなぁなんて、
想像しました。
溽夏の日々、
皆様もどうか健やかにお過ごしくださいませ。