一年を24に分けたものを二十四節気と呼び、
それをさらに3等分ずつにしたものを七十二候と呼びます。
ひとつの節気で大体15日間、ひとつの候で約5日間です。
6月10日~6月15日頃は、二十四節気で言うと「芒種」、
七十二候は「腐草為蛍」と名付けられています。
* * *
七十二候の「腐草為蛍」は、
「くされたるくさ ほたるとなる」と読みます。
蛍は、蒸れて朽ちた草の下から現れることから、
昔の人は、腐った草が蛍になると考えたようです。
蛍は和歌に詠まれることもあります。
もの思えば 沢の蛍も 我が身より あくがれ出づる 魂(たま)かとぞ見る
(沢を舞う蛍は、貴方を恋しく想うあまりに、
私の体からさまよい出てしまった魂じゃないかと思うの)
という和歌があります。
作者は恋多き女性として有名な和泉式部。
蛍は恋心の例えとして、
和歌に詠まれることも多いですが、
ここでは、
蛍=抜け出た魂として表現されています。
相手を想い焦がれるあまりに、
魂が抜け出てしまうなんて驚きですね。
でも古来、日本人は、
生きている人の魂は体から抜け出てしまうことがある
と考えていました。
くしゃみをすると魂が抜けてしまうので、
それを防ぐために「くさめ」と呪文を唱えたり、
魂が抜け出ないように、
着物の端を結ぶ「魂結び」というまじないを
行ったりしていたんです。
ちなみに、
先程の和歌に出てくる「あくがれ」は、
「あくがる」という動詞です。
「あくがる」は、
「心(魂)が体から抜け出る」という意味。
では、この「あくがる」という単語、
漢字でどう書くと思いますか?
答えは「憧る」です。
そう、現代語の「憧れる(あこがれる)」は、
「あくがる」から発展して出来た言葉なのです。
あこがれるとは、
強く心惹かれること。心奪われること。
つまり、何かにあこがれている状態とは、
心奪われ、うわの空になって、
魂が抜け出てしまったような状態のことなのです。
魂が抜け出てしまうほど憧れる状態は、
果たして幸せなのか。
皆さんはどう思いますか?